優しい罠と共犯者


「……」

無言で目の前に突き出された皿を見ると、サンジは心地よい風に吹かれた時のそのままの笑顔を目の前の相手に返した。

「おーテメェにしてはいい選択だなぁ」

考えた上でなのかそれともたまたまなのかどちらかは分らなかったが、 目の前に更に盛られたのはチーズやマリネの乗ったこんがり焼けたフランスパンや ピクルスなどを小さく食べやすく且つ可愛らしく飾り串で纏めたツマミで、 野原に相応しくない獲物を三本ぶら下げた、野原みたいな爽やかな頭をした相手はあまり好まないツマミであった。

「メインを取られちまったらしいからな」

「…何の事だ?」

ニヤリと笑うゾロにサンジは分らない振りで返す。
それには特に反応は見せず、ゾロはそう言えばと話題を変えた。

「で、チョッパーは何だって?」

「ああ、あん怪我はどっかで罠に引っかかったらしい。まぁ、不幸中の幸いか大した怪我は…」

立て板に水の如く喋っていたサンジだが急に口を閉ざし、がばがばと勢いよく酒を煽り始める。

「もったいねぇ。そう強かねぇんだから、やめておけ」

グラスを奪われ、口にサーモンマリネを突っ込まれたサンジは目を白黒させながらモゴモゴと必死に咀嚼する。

「てめぇ、何しやがる!」

「サービスだ」

けろりと言い放ち隣に座る剣士に言い返す元気もなくサンジは顔を逸らす。
あれを見られていたのは、何故だか少々気恥ずかしいものがあった。

「あ〜畜生ッ」

そう唸るとサンジはガシガシと髪を掻き毟る。
金のぱさぱさと跳ねまわるそれは乱れるがままであったが、それはすぐにゾロの手で止められた。 そして「ほっとけよ」と言おうとしたサンジの口に、又してもサーモンマリネが入れられた。

「…同じもんよこすな、タコ」

そう悪態をつきながらもサンジはもぐもぐと食べる。
その姿が気に入ったのかゾロは文句も返さずに次ぎは何が良いのかと問う。
ゾロの予想外の問いかけにサンジはどうにもうまく返せず、「チーズ」と言うのが精一杯だった。

「どこから見てた」

もごもご微かに口を動かしながらサンジが聞く。

「先刻まで酒が美味いだの何だだの騒いでたオメェが急に静かになったから、何事かと思ってよ。見たらあん狐が肉狙ってた」

「…そこまで見てたんなら肉とられないようにフォローでも何でもしろよ…」

「ああ?わざとだろ?」

「はぁ?」

「あん狐が肉狙ってるって気が付いた途端にテメェはわざと気ィ抜いただろうが。だから邪魔しないように俺も気配消しといた」

それでよかったんだろう?
そう問いかけるゾロの顔をまじまじと見てからサンジは子供のような全開の笑顔でニカッと笑った。
てっきり、怪我をした狐に肉を取られた事を単に揶揄られると思ったサンジは、そうはない事を知って一気に気分が軽くなった。 狐に餌をやったと自ら言いたくもないし、然りとてゾロに揶揄られるのも腹が立つという、 複雑だったり単純だったりするサンジの思考回路であるからゾロの言葉の真意が分るまでは中々に忙しかった。
また、珍しくも人間の機微に疎いゾロがそれを察したのか、はたまたサンジの機嫌を損ねたくないという防衛本能から来たもの なのかは分らないがうまい事に一番言い選択を今回はしたらしく、サンジの機嫌は先程気持ちよく風に吹かれている時以上によかった。

そしてその機嫌のよさは、指の間で短くなってしまった煙草を一度深く吸い上げ思いきり青空に向かって吐いて喋ったサンジの、

「俺ァ、コックだからな」

というお決まりの台詞を吐いた後の笑顔で十二分に察する事ができたのだった。



END


*text


***オマケ

「コックは食いたい奴には食わしてくれるんだよな?」

「あ、ああ?何だ!お前リクエストあるのか?」

珍しいゾロの申し出にサンジが勢いよく食い付いた。

「コレが食いてぇ」

ゾロ指差した空間にはそのヒントになるものなど何もなく、サンジは意味が分らず首をかしげた。

「なんだよ?テメェまさかこんな何にもないトコ指して美味い空気が食いたいなんて言うんじゃねぇだろうな?あぁッ」

簡単に切れたサンジには頓着せず、ゾロは首を振った。

「そんなんじゃねぇ、コレが食いたい」

今度は、指をしっかりと空気以外に触れさせた。

「は?」

指先をみれば其処にあるのは自分の鎖骨で。サンジはポカンと口を開けた。

「いただきます」

かぷりと鎖骨をやんわりと食まれ少々痛みが走る位に吸われて暫く、サンジはようようの事で怒声をあげた。

「こんの変態クソ剣士!まっ昼間からサカッってんじゃねぇ!」

昼間から調子に乗ってしまった不届き者にアンチマナーキックが炸裂したのは言うまでも無い事で。 更には船に戻る頃にはゆったりと風を受けていたサンジの上着が見事なまでに上までジッパーが閉められていた。
というのも言うまでも無い事であった。



***END
(私の頭が終わっているとも言う)

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あの開いてる胸元にムラムラきた人〜!ハイハイハイハイ!
…それは私です。

2003.02.24

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TOPからTEXTに移動にあたり、ちょこちょこっと。
表紙興奮冷めやらぬ頃に書いたので、誤字脱字たくさん。とほほ。

2003.02.28