肉体修行



サンジはとある法則に気が付いていた。
それはゴーイングメリー号に生息するシオグサ目シオグサ科のロロノゾロ毬藻の生態ともいえる。

(もしかしたら学会で発表すれば学者として大成功。
ニュースで世間を騒がし、地位と金とこの美貌でありとあらゆるレディと素敵な夜を過ごせるかもしれねぇ。)

ごくりと唾を飲み込みながらサンジは格納庫奥にある予備ロープ、 緊急避難用ボートなどがごっそり置かれている少々磯臭く薄暗い片隅で両手を握り締める。 その本人曰く、レディよりかはもちろん逞しくしかしそこいらの粗野な男とは違う美しい白魚のような手は汗に濡れ、 じたじたとまな板の上で暴れるサカナのヌメリを連想させる。

何故そこまで汗を書きながらそれを見つめているのかと言えば、それは毬藻の生態に宇宙の神秘を垣間見てしまい、 はっきり言って正常な思考ができる状態ではないからなのだが、あいにくとそれを指摘する天才ツッコミウソップは今頃すやすやとハンモックで眠りに付いている頃だった。 もっとも、ウソップがこの有りさまを見たら突っ込む前にあまりの異常さに気絶する可能性が高かったが。

(しかし、本当にスゲェな。噂に聞いた事はあったがそんなの絶対作り話だと思って笑い飛ばしちまった。 てえか、それどころか蹴りあげちまったよ。すまねぇなぁ情報提供者サン)







サンジがシオグサ目シオグサ科のロロノゾロ毬藻(以後、一般的な名称である「ゾロ」とこれを称す)の法則に気が付いたのは、 めでたく男同士ながらに恋人同士になりすぐさま清い関係から大人の関係にステップアップ。 更に開発化が存分に進んだ頃の事だった。

普段昼間から寝腐れているゾロにも一定の昼寝法則があるのだ。
例えばそれは、

1.不審番の次の日は鬼の様に寝まくる。
2.サンジと楽しく結合の夜の次の日はそこそこ寝腐れる。
3.サンジよりも早く寝た場合はあまり寝ないかわりにトレーニングが倍増。

という、人間の身体のことを考えれば至極真っ当な「たくさん寝れば昼寝が少なくなる」というパターンであるが、 どうもそれに合わない場合が存在することにサンジは気が付いたのだ。
そう、それは

サンジがゾロよりも速く寝てしまった場合。

である。上記のパターンから考えて見るとサンジが寝ているので2、3番は除外され、 更に不審番は持ち回り制であるのでそれにも当て嵌まらない場合。 その場合のゾロの行動といえば、

鬼の様に寝まくり、起きたかと思えば寝不足なのかまたは違う理由でなのか、 とにかく泣く子が気絶する程の凶悪な顔で眼を血走らせながらトレーニング。 更には泣くサンジが気絶する程の勢いで夜伽をしてくださる。

…のである。

朝方の黄色の太陽が不健全に眩しい中、 立てないくらいまで責められた身体は隣ですやすや眠るゾロの息にまでゾクりと反応するほどに敏感になり、 その日一日はできるならがゾロに触られたり、見られたりするだけでヤバイ。
というか、根刮ぎ搾り取られすっかり萎れたと思わしき己の息子が 弱りながらもふるふると勃つという哀れな姿をサンジは見なければいけないのである。
男としてその状況は心底辛く最低だとサンジは常々思っているのであり、 一体全体サンジが寝た後にマリモは何をしてくているんだコノヤロウ。と思ってしまうのは致し方ないといえる。

そして、それに報いる為にはちょっと位ゾロの謎を解き明かしてもいいんじゃないかと。 そう長々しく理由を付け、わざわざゾロに先に寝る宣言をし、 こっそりと格納庫兼ゾロの個室兼愛の小部屋にもなっている格納庫へと忍びこんだという次第である。


まさか衝撃映像を脳味噌にじりじりと焼き付ける羽目になるとも思わずに。







(んげ。こんな夜中に格納庫でわざわざ腹筋すんのかよ。 …明日の朝はたくさん水与えてやらねぇと、大事な緑が色褪せちまうなぁ)

狭い船内。何かするならば格納庫しかないだとうと思い忍び込んだサンジだが、 あまりのビンゴっぷりに相手の頭の単純さに溜息を付きながらもマリモ研究に精を出す。
しかし対象はいつもの様に腹筋、背筋、腕立て、スクワットを淡々と熟すだけで一向に「何か特殊」な事をする様子が見えず、 だんだんに欠伸が出て来る。更には欠伸を噛み殺すのも億劫になり、このままこっそりここで寝てしまおうかとまで思ったその時、 ついに事は起きた。

(んぁ、もう寝ちまおうか…アイツももうそろそろ止めそうだし。つうか今さらそんな汗くせぇシャツ脱ぐな。 ん、もしかしてこの部屋にずっといるから慣れちまったみてぇだがここって物凄く汗くさいんじゃねぇ? 男臭い部屋にいんのは…ってぇぇぇ、何で下まで脱ぐんだ。)

汗水漬の身体をブルリと震わせ汗を弾くその姿は、見る者が見れば惚れるほどに素晴らしい肉体美を晒しているが、 残念ながらそれはボトムに下着全てを外し、 ぶらんとぶら下がり揺れているったものがそれをマヌケに演出してる。

(ぬあ、フルチンスタイルかよ。
股間のマリモが汗でほかほかしてんのなんか見たくねぇ。
何しくさってんだよ、てめぇは…んんぁッ!
!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!!イテェ…)

思わずセックスの最中以外に見せ付けられるゾロの息子に、サンジは視線を逸らそうとするが、 それは思いがけない相手の奇行により逆に釘付けになる。

(な、何。なにやって。
何で。んな大事なもん殴りつけてんだよ!!!!
しかも、グー。あんなでっかっくってごっつい手握り締めてたらどう考えても壊れるだろ?? 何の必要があって自分のチンコなんて殴ってんだよ。
何。もしかしてゾロって…マゾ?)

素っ裸になったと思えば徐に己の男根を左手で作った握りこぶしでがつんがつんと殴りつけている。 しかも絶え間無く何回もだ。
常識、というよりも同じ男として考えも付かないし絶対にしたくは無いその行為に サンジは今までに無い程の「何で」を頭の中で浴びせる。
が、勿論それが相手に伝わるわけも無く、 ただただひたすらにゾロはそれを叩き続ける。 振り上げた左手が己の急所に当たる度にふうと一息呼吸を整えきらりきらりと流れる汗が光り、 手元さえ見なければそれは美しいスポーツ熱心な男に見えなくも無い。
無いが、既に見てしまえばそのような考えはあっという間に消え去る。 ただただもう微妙である。異様である。がしかし、見た事のないそれは恐るべき魔力を発揮しているようでサンジは眼が逸らせなかった。

(何なんだよ、コレ。
…トレーニングの後に自分に御褒美ってことでマゾプレイなのか?そりゃ確かに一人きりじゃなきゃできねぇえけど。んでもなぁ。 顔、そんな気持ちよさげじゃねぇし。俺とノーマルプレイしてる時だってソンナ厳しい顔してねぇ。 もっちとこう…っておっ勃ててんな俺!)

サンジにとっては認めたくは無いことだが、 目の前にぶら下がるゾロの一物と抱かれる度につい盗み見る相手のイイ顔を思い出し、 気が付けばすっかり前屈みの姿勢で、誰にも見られていないというのについテントを貼っているその部分を両手で隠す。

(やべっ、こんなんで勃ってるどころか、ヤベェ、ぬるっとしてきてやがる…。 畜生、なんでテメェで勃った上にぃぃななななななああぁぁぁ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! ! )

一瞬にして前屈みだったサンジはこてんと後ろにひっくり返った。
「黙々と己の男根を殴る男」以上のインパクトのある物を見せ付けられ、あっけなく腰を抜かしたのだ。

(す、すげぇ。何だありゃ…
も、もしかして、マゾじゃ無くて、鍛えてんのか…あそこを。)

ごくリと唾を飲みこみながら、とりあえずサンジはゾロがしている事をもう一度しっかりと確認する。 あまりの出来事に自分の目が信用できなくなったようだった。 しかし、長年海を見続けてきたサンジの目はそんじょそこらのシティボーイが腰を抜かす程に良かった。 どの位かというと、マッチ棒サイズ程まで離れた女性のスリーサイズが見事に判別できる程。

(ありゃ、やっぱり鍛えてんだろ…そうだ相手はあの修行マニアだ。
…ありえねぇ話じゃねぇ。しかし、実物をまさかこの眼で拝めるとは思わなかったぜ。)

ふう。と殊更静かに息を吐き出し額を意味もなく拭う。
その手は握り締めていた為にはっきりいって拭った額よりも濡れていたのだが、 そのような些細な事に気が付くような状態ではなかった。
なにせ目の前ではゾロが米俵を相手に己のブツをグサリと挿してはズルリと引っこ抜いている。 その速さはピストンの如し。
抜き差しを繰り返すたびに飛び散る藁がいっそ滑稽だった。
飛び散る藁を見ながらそれが米の入っていない特訓用の米俵である事に安心するサンジもその混乱加減が滑稽ではあったが。

(…うぁぁ。ここまで見ちまったらもう見つかるわけにはいかねぇな。何されっかわかんねぇ。 嫌っていうほど昼寝も特訓もセックスも激しい理由も分かったし。
要はこの秘密の特訓の成果を試したかったってわけだ。
そういや、この船に乗りたての頃に喧嘩の最中にアイツの蹴っちまった事があったな… あんときアイツは怒らなかったし、痛がリ方もあまり酷くなかった。
つうか、オレの蹴りうけたら潰れてもおかしかねぇ。
それどこか、思い出した。 そうだ、暫くして落ち着いたヤツァ確かに、「うしッ。まずまずだな」とか言ってなかったか?
あれは修行の成果に対する満足の声ってやつか??)

サンジの中で確定ランプが赤く光りぐるぐると回る。
ソロはそんなサンジに気が付く事もなくトレーニングを続けている。 気が付かない理由はサンジに殺気が無いからか、 または無我夢中で鍛えているからなのか。剣豪として生きる彼を思えば前者だと思ってやりたい所だ。

「剣豪だけに第4の宝刀を鍛え中ってわけかっよ。ハハッ…」

ピタリとゾロの動きが止まった。

(やべえッ。オレァ今、声に出してかッ?)

慌ててサンジは口元を押さえるが、時既に遅し。
ゆっくりとゾロは声のした方へと歩み寄る。 その顔は正に魔獣そのものでサンジは体の毛穴という毛穴全てから汗が湧き出すのを感じる。
もはや、ゾロの一物に付いている藁屑はコメディではあらず、それすらが異常な行為だとサンジに知らしめる恐怖となった。

「わ、わりぃ…」

生まれてはじめての素直なサンジの謝罪が聞き入れられることもなく空しく静かに消える。







「…見たなら、てめぇも付き合え…」
「ウァッ…アァァァァ」







ロロノア・ゾロ恐ろしい宝刀使いである。



おしまい



*under

とりあえず。ごめんなさい。(ペコリ)

新潮社から発売中の
大.槻.ケ.ン.ヂ著(大好きなんですよ。ほほ)

『オ.ー.ケ.ン.の.散.歩.マ.ン.旅.マ.ン 』

に書いてあった、勝.新.太.郎主役の

『御・用 牙・か・み・そ・り・半・蔵・地・獄・責・め』

という作品に上記のトレーニングが描かれているそうです。
この部分を読んで思わずゾロがそうだったらと思って電車でぐふぐふしてしまった変人でごわす。
ゾロファンには大変申し訳なく…。

にしても、そんな映画があるんですね。
出来れば怖いもの見たさで借りてみたいです。
でもヒトリは嫌。
だれか上映会しませんか。ごっつそうですよ〜。

というか裏ってダメゾロばかり?

-- 追記 --
作品名にドットなどを入れているのは、FAN検索に引っ掛からないようにするためです。
へたれですいません。
ちなみに映画名は検索引っ掛かって荒筋見れます。是非。(笑)

つうか、…続けたいんですが。よいものなんかなぁ。これ

2003.6.21