温かな腕



昼寝の最中に、匂いとルフィの騒がしさで体が勝手に起きる準備をする。
そんな事が多々あったからか、最近ではあまりコックに蹴り上げられる事が少なくなっていた。

パカリと目が自然に開いた。
この覚醒はさにそんな昼時のものに似ている。
そう呑気に思うが、すぐに振りかかる騒音に現状を把握する。

がばりと勢いよく起き上がろうとするが体が酷く軋んで気持ちよく体をコントロールできない。いや、軋むというよりもしっかりと機能を果たしていない。
それに似ていて、 ありえない体の反応に驚愕した。

今までに経験した痛みでも熱でもないものに支配されたことのない体に、自分が気を失う前に何がおきたのかがまざまざと浮かびあがる。
ギリと歯を食いしばる。
戦闘を開始してからあんなにもあっさりと気を飛ばすなんて事は考えもしなかった。
いくら電撃を受けたとはいえ、それでは駄目に決まっている。
能力者だとかそんな事は関係なかった。
それを引き合いに出すのは弱いヤツがすることで、けして自分はそうはならないと負けてなお弱弱しく吼え続ける真の敗者を見て思ってきた。
いっそ電撃に強くなるように鍛錬するべきだろうかと、方法も思いつかないような事を考えて、気がつけば手のひらを握り締め考え込んでいた。
ふう。と息をゆっくりと吐き出す。
呼吸は平常時でも戦闘時でも大事な基礎だと、昔教わった。
それは今でも自然と身について気が付くと実践している。
たったそれだけで落ち着くのがいまでもわからないが、便利なもんだ。
第一に考えることはそう得意じゃない。
とにかく今の現状をどうにかするのが先だ。

痺れる体は、いつの間にか握り締めた掌が吹く飛ばしたのか、筋トレ時に意識して体を動かすようにしてやればすんなりと動いた。
多少は面倒くさいが、すでに慣れてしまった行為だと振りきり起き上がる。

目に入ってくるのは眩しいほどの光。
雷がそこここで鳴り轟いている。
今までに雷が乱舞するなんていう景色は見たことがないが、恐怖心は感じない。
自然現象であればともかく、アレはあの耳たぶ野郎の仕業だ。
ならばあいつをぶった斬ってやれば収まる。
簡単なことだ。

がちゃりと刀を鳴らす。
3本は大人しく腰に収まっているが、ビリビリと鍔鳴りをしているようだ。
それは自分を叱咤しているのか、それともアレくらいでと嘲っているのか、
どちらともしれなかったがそんなことはどうでもいい。
決定しているのは次は負けねぇ。それだけだ。

ゆっくりと、体の機能を確かめるように立ち上がる。
まず目に入ったのは、立ちすくむゲリラに小さなガキがしがみ付いている。
その姿だった。
鳴り続ける雷に恐怖を感じているそうな様子ではない。
ただ、その背中が何かを語っているようだった。

こいつも、負けたのか。

その背中はそれを語っていた。
負けを認めたヤツのそれはまた、まっすぐに伸びるのだろうか。
アイツのように。
酷くまっすぐな背中が浮かんだ。
いつもは猫背の癖をして、ここ一番で誰よりものすらりと真っ直ぐに立つ男の背を。

「ゾローッ!」

声がしたほうを振り向けばそこにはウソップと、担がれた男。
長い手足が邪魔をするようにウソップに絡みつき、歩きにくそうだ。
良く見れば、いつの間にか結構気にいっていた鮭色のシャツが、いつのまにか自分のものになっている。
けっこう気に入っていたそれを着ている男は、きっと「借りてるんぜ?」とニヤリと笑いたかったに違いない。気を失っているからそれもできないだろうが。
そして「勝手に着やがって」と言いたがっている自分がいるのに気が付いた。
あまりにも浮かれすぎているそのセリフは気恥かしい。
喋らないヤツをじっと見る。
気に入ったシャツの隙間からみえるのは自分が好きな白い肌ではなく、煤に染まった包帯でだけなのが気にくわなかった。
顔が見たいと、強烈に欲する。

「よこせ」

低く声が出た。
それは必死に皆に指示を出すウソップには聞こえないようで、苛つく。
こういう時のヤツは案外に役に立つのはよく分かっているんだが、それに従うよりも、

「おい、ウソップ。ソレ寄越せ」
「ああ?」

急いでいるのと、轟音で声が届かない。
苛立つそれを抑えながら近寄る。
ぐいとウソップの背に纏わりつくつくそいつを奪い取る。
くたりと簡単に引き寄せられるそれに眉寝が自然に寄った。

「お前はソッチのトリを運べ。その方が速ェ」

有無を言わさず沈黙したままの身体を持ち上げる。
相手の腰を支点にし、肩に担ぎ上げた。
だらりと弛緩した腕がトンと背中に当たる。

「おっ、おう!ありがとうな。ゾロ!」

俺の思惑などには気づかず、むしろ気にする暇もなく、ばたばたと向こうに転がっているトリへと向かう。

とん。ずり下がる身体をゆすり上げ、足早にその場を去る。
歩くたびに、振動でゆらりゆらりと背中で腕が揺れる。
何時もならば力強く巻き付けられるその腕の弱さを物足りなく思うが、それでも背中に肩口に、そして自分の腕も巻きつけた胴体からは暖かな熱が伝わり、じんわりと馴染んだ。
体がそれをヤツであると覚えてしまっている。
トクントクンと穏やかな心音は見た目と違う頑丈さの証明だろう。

もしかしたら男一人背負うのは今の身体には負担がかかるのかもしれないが、鍛えている自負がある以上そんなことは気にする必要はない。どうでもいい。
なにより馴染んでしまったそれを離すほうが嫌だ。
それにここでうだうだしてる暇も無い。
兎に角アイツを倒す場所まで行く。それが先決だ。
それまでは、この背中の男が起きない限りずっと触れていたい。
きっと、目が醒めたら、俺に担がれている事を嫌がるだろう。

そしてきっといつもの聞く寝起きの掠れた声でぐだぐだと文句を垂れるに違いない。
早くソレ聞かせろ。
そしたらそのウルサイ口を一回塞いで、テメエが言う所のクソ長耳ヤロウと対面だ。



おい、クソコック
早く起きねぇと、あの野郎は俺が仕留めんぞ。




END






つうわけでWJ妄想SSです。
明日のジャンプはワンピ休載ですな。
淋しいですが、尾田先生にはゆっくり自分の時間を取って貰ってまたワンピに燃えてもらいたいっす。

それまでは大人しく妄想して待ってます。

その結果がこれなんだけどさぁ。
自分の妄想でもサンジでてこねぇって…。涙。

-------閑話↓

全然関係ないんですけど。
私がゾロサンスキーで脛下スキーである事を知っている友人に
「ゾロに脛下はないよぅ。あったら芝生ができちゃうじゃん。」
と言いましたら
「じゃあアソコはどうなんだ」
と聞かれました。
とりあえず
「股間には毬藻がおわします」
と答えときましたが、正直頭の中にはつるつるゾロが浮かびました。
パイパン剣豪…いつか書いたらごめんなさい。(下ネタすぎ)

2003/08/03




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