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宴の後 「なんかよ」 「おお」 「あの島出てから、それはもう忙しいわけだ。毎日毎日あんのクソ船長が食うわけだ。鬼のように」 「今回の功労者だかなら、テメエが好きでたまらねぇナミも許可してるしな」 「いや、俺はロビンちゃんも好きでたまんねぇぜ。ココだけの話」 ここだけじゃなく、この船のクルーであれば誰でも知っていると言いたかったが、 それを喉元で必死にやり過ごしたゾロは沈黙で答える。 「んで、」 まず、「んで」も何でもない。 そもそも分のつながりとしておかしいと学のない自分でもここは確実にあっていると筈だと思いながら、 やはりゾロは沈黙で返す。 「とっても俺は疲れているわけだ」 「おお」 朝朝昼昼オヤツ晩夜食といったスケジュールでゴム胃袋に餌を与えているのを見ているゾロは サンジの訴えはもっともだと頷く。 「で、こっからが重要だ」 ぐん。とサンジが顔を近づける。 晩酌後、さて寝るかと席を立ったゾロの後頭部にレードルを投げつけた相手は、文句を言う間もなく、 格納庫で待てとゾロに命令する。 普段ならば言うことなどちっとも聞かないゾロではあるが、格納庫へ行けという命令だけには素直にしたがう。 そこに行けばご馳走にありつけるということを知ったパブロフの犬と同じである。 いや、犬のように涎をたらさないだけまだマシかもしれないが、たまにとある部分が鬼のように立ち上がることがあるので、 もしかしたらパブロフさんとこの犬よりも劣るかもしれない。 「よく聞け」 ぐ、ぐん。と更にサンジの顔が近くなった。 格納庫で仰向けになってうとうとしていたと思ったら乱入してきたうえに、 なんの断りもなくゾロの腹筋の上に跨りいきなり話し込む相手に、躾とはなんだろうかとゾロは考える。 ゾロは魚の骨までおいしくいただく無骨者ではあるが、道場に通っていたこともあり、挨拶などの礼儀には割合強い。 したがって、突然相手に跨ることはしない。 まあ、対サンジになると九割九分九厘で無理なのだがそれは一旦置いておこう。 「おい、クソマリモ」 ここは当然のことながらゾロは返事をしない。 「疲れマラって言葉しらねぇか?」 しかし相手は当然の事ながらゾロという一人の個人の主張など全然気に求めないでいる。 止められない方も、成れて締まっている為に、特に何らかの抵抗を示すこともなく、 おとなしく会話を続ける。 「知ってる」 「いいか、俺は、疲れマラな筈なのに、勃たねぇ!テメェとヤんないの、一週間近いぞ!」 まあ、大変。と、両手を挙げたものの、 あまり大変そうでないコックにゾロは長い前置きの後のなんとも言えない告白に眠気が倍増する。 「まぁ、そうだろうな…俺も勃たね…」 「!イン」 圧し掛かられたまま胸倉をつかまれてとんでもない単語を吐かれそうになったゾロは、 その両手首を簡単に片手で纏め、動けないように固定する。 「続きを言ったら斬るぞ」 「ポータント?」 刀を抜かれることは流石になかったが、相手のあまりの凶悪面にサンジは薄笑いで誤魔化す。 「…あの花に食われかけてから、あいつらも疲れやすいとかそう言ってるだろ」 「そーなんだよ。ナミさんもロビンちゃんもケーキを食べる時、何時もよりはしゃいでねぇもんなぁ」 しょんぼりと肩どころか頭をがっくりと落とした サンジの格納庫の暗がりでもぼんやり光って見えるそれをゾロはひと撫でして溜息を付く。 自分の性欲ひいては生殖機能が低下していることよりも、女の反応を気にするとは思わずに、 ゾロは己の考えの甘さを再認識させられる。 「こんだけくっついても勃たねぇんだから、今日は諦めろ」 サンジが乗っかってきてから、非常に微妙にだが腰を押し付けられ、そこを擦り合わせてはいるが、 一向に反応を示さないゾロの息子を許さないサンジにそろそろ諦めをと言い聞かせる。 「ナンもしねぇなら、俺は男部屋で寝るぞ」 そう言いながらも自分の体の上からどこうとしない相手にゾロは静かに笑いながら、 そのうすっぺらな相手の身体に腕を回して拘束する。 「たまにゃいいだろ」 「まあ、めったにねぇな」 何時も熱に浮かされたように身体を重ねる様子を思い出してか、サンジはクスリと笑うとふっと力を抜く。 「貴重だろ」 相手の体温を感じるように、静かに掌を身体に這わせながらゾロは眼を閉じた。 「なぁ…アイツは馬鹿だよな」 静かに黙り込んでいたサンジが思い出したように、彼の話をする。 仲間恋しさに、他の海賊の仲間の命をあやかしの花に奉げた男。 「いつまでも仲間を縛り付けて、テメエだけ朽ちていくんだぜ。残された方はたまったもんじゃねぇよ」 ぎゅうとゾロの胸元にある白い手が握られる。 「…あいつが死んだら仲間は養分が枯れ果てて結局死ぬんだろ」 「でも、心構えはアイツだけしかできねぇよ。 残された方は、消えたアイツを心配して若葉に変えるんだ…たまんねぇよ」 まるで自分の身に起きたことのような声を出すサンジにゾロは眉を顰める。 「それでも居て欲しかったんじゃねぇか」 化け物の根から剥がれ、知らずにルフィに元に戻ってから暫く。 能天気な店長は自分らが捕まった間の話は一切しないで笑うが、 ふとした弾みでルフィとあの男の遣り取りが脳裏によぎり、その度に皆複雑な気になっていた。 罠とはいえ、一度離れかけたその罪を贖罪もできずどうにか昇華させようとしていた。 「その気持ちは分からないとは言わねぇ…でもバカだ。辛い道選じまったアイツはバカだ」 胸の上で吐き出すように呟く男は、あの男の孤独を相当感じたようで、 ゾロは握られた手をそっと掴もうとするが、すっと逃げられ小さく宙を切る。 「…俺は、前みて歩くぜ」 とん。とサンジは下にある、すっかり癒えた大きな傷を叩く。 「おう。俺なんかに構わず進め」 むっすりと結ばれていたゾロの口角が僅かに上がる。 「ばっか。俺が一番大事なのはナミさんとロビンちゃんだテメェじゃねぇよ」 「そうか…」 続けようとした言葉は消え、代わりに暖かい唇がゾロに与えられた。 眼を閉じると、子供のように泣いている男の声が聞こえたような気がした。 彼を孤独の淵より救うために存在した花の、ばらばらになった中身をかき集め、 花の復活ではなく仲間の復活だけを願う男の声。 その声は低く、高く、そして消えていく。 それは、花が散った瞬間に若葉と姿を変えた彼らが持っていったのか、それとも彼の心の闇に消えたのか。 「あんなやつどうでもいいんだ」 そう気持ちと裏腹な言葉を吐く、命を奪い、命を育む男の胸に消えたのか。 「いいから寝とけ、明日もゴム腹につきあうんだろ」 どうでもいい。 ゾロは胸のうちで呟き、温かな身体を引き寄せた。 とある島の孤独な男爵と会った海賊の話。 今年の映画は正直言って一番よろしかったと思います。絵も内容もどちらも。 ルフィが仲間を失ったらという題材はなかなか昇華できない題だと思いますが、 あえてチャレンジするもよし!その為にクルーも揉めます。 映画の時間枠であの仲間をバラ消させるのはなかなか難しく、ナミとウソップの辺りは?とか思いましたが。 それでもよかったものはよかった! 正直よすぎてゾロサン萌えし忘れました。(あかんがな!) いやでも、ほんとオマツリ男爵で泣いちゃってそれどころではなかったですよ。 敵を美味く書いてこそワンピ。 今までのなかで最高です。 変な萌えなんかなくても同人女もちゃんと萌えるのだという証明です。 といいつつ、ちょっと萌えゾロサン書いちゃいました。てへ。 ↑20050327春コミのペーパからのコメント。 映画話を書くこと気を取られすぎて、 名乗ってもいなければ、 サイト名もアドレスもメールもなんもないペーパー。 ボケにも程があるという… にしてもまぁ。 最近オペーパー終わらない悪循環をようやく抜け出せた、うれしい一作です。 (よろこぶ場所が違うわー) 映画まだまだ見たりないです。 つーか本誌で尾田先生が映画の絵がキレイと褒めていました。 ちょっと東Aの反応が怖い小心者の私です。笑 でもでも来年もあのクオリティで是非お願いしたいー! 2005/03/27 |